SL列車が現役で走る全国的にも貴重な秩父本線【埼玉ブルース第23回】

埼玉ブルース

誰が言ったか知らないが、訪ねてみれば確かに感じる魅力のご当地をさすらう「埼玉ブルース」。

お月見・梨もぎ・紅葉狩り……この行楽のシーズンには電車での移動も欠かせないもの。
そんな電車の前身である蒸気機関車が実用化された19世紀から、今年でめでたく210周年!
節目の歳を迎えてさらなるファンを増やし続けるその魅力を探りたいと言うことで、

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そんな訳で、ぶらりも途中下車もすっ飛ばしてやって来たのは、秩父鉄道の三峰口駅。
周辺に小高い山々を望む風光明媚な佇まいの駅舎は、なんと県内最西端のお墨付きを頂くそう。

と言うことは、もう少し進んだ先には東京と言う大都会が待っているのだろうか?

どれくらいで県境に着くのか興味はあったものの、それするともう「埼玉ブルース」じゃなくなっちゃうので失礼しようと思います。べっ、別に都会がおっかないとか、そう言うことじゃないんだからねっ!

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ここ秩父鉄道は、今でもSL列車が現役で走る全国的にも大変に貴重な秩父本線を有している。
もちろん車両自体は鉄道博物館やいくつかの公園でも見ることが出来ますが、実際の走行や転車台を
使った機回しを拝めるのは、まさにこの場所ならでは。

しかし、その運行は辛くも一日一回のみ。まだ時間に余裕があると言うことで、
ご近所にある車両公園にお邪魔して来ました。
その道中で早くも大量の電車を発見!これはなかなか幸先がよさそうです。

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それにしても、さいたま市街からこの三峰口駅までは、どう頑張っても片道二時間超。
わざわざ電車を見るためだけに電車を乗り継いで来るって、どんだけ目覚めちゃってるのか。
もしかしたら鉄ちゃんの称号を賜れる日も近いかも。

先程の改札口からぐるりと大回りするかたちで線路を跨いだら、すぐ先で待ち構えていたのは
なんとも貴重な貨物列車。これがもうインパクトがあるのなんの、ビックリするほど馬鹿デカいです!

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この車両公園の醍醐味は、何と言っても実際に使われていた線路に立ち入ってもお叱りを受けずに、
ゆっくりじっくり楽しめること。レールに沿って歩いてみたり、枕木を枕にしても当然ながら
轢かれる心配は必要ナッシング。

普段なら絶対に乗らせてもらえないタイプの列車にだって、こんな風にウェルカムされちゃいます。
流石に中に積荷はもうないものの、昔は人々の役に立っていたはず。
どんなものを運んでくれてたんでしょうか。

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ここに停車したまま動き出さないのをいいことに、普段なら絶対に不可能であろう角度からの
ショットも撮ってみる。今までは意識したこととか特になかったですが、ひとつひとつ精巧な
パーツで成り立つ車体の構造は複雑そのもの。

線路との間には結構な隙間があって、お伺いした日曜日には小さいお子さん達が潜って遊んだり
なんて微笑ましい光景も。大人でも小柄な方なら頑張れば滑り込めるかも?
確かに轢かれる不安はなくても、よもや子供と車輪の下で接触する恐れ。それはそれで大事故です。

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こちらは打って変わってごく親しみのある一般形の旅客車両。特に、こちらのデハ100形は、
現役当時は通勤列車としてサラリーマンや学生さんなど様々な客層を都市部へ送り届けていたのだとか。
ちなみに、この”デハ”とは電動の普通車って言う意味なんだって!

意気揚々と乗り込もうとしたところ、まさかの立ち入り禁止につき、残念ながら断腸の思いで断念。
どうやら破壊や盗難が相次いだのが理由だとのこと。広く一般に、しかも無料で門戸の開いたこの施設。
いつでもマナーを守って楽しみたいものです。

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わー、この色彩とか造形チック!
なんだか某機関車Tーマスとかに出て来そう。

って言うか、割かしまんまな色合いに、何処かからM本Lオのナレーションが聞こえて来ることを
期待してそこかしこで意味深な態度をとってみるも、そこは鄙びた魅力の奥秩父。
うまく電波は入ってくれなかったようです。

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その先頭で風切る(と言っても、止まってますけども…)運転台車両も開放されていたので、
恐る恐る入ってみるも、、、

えっ、操縦車両ってこんなに狭いの!?

大人一人がやっと通れるかと言うくらいの狭さは、まさに穴倉並み。
恐らく収納活用術のプロもこれには泣いて逃げ出すレベル。昨今なにかと取り沙汰されがちな
運転手さんですが、ここを縦横無尽に行き来してたってだけでスゴイ。って言うか、なんだかもうスゴイ。

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はじめて入った運転席は、見渡す限りスイッチやレバーにハンドルだらけ。
もちろん、どれも手動です。例えば、こんなワイパーまでも。

あれ? これが手動って、一体全体運転の方はどうやってたの?
……ちょっとだけ寒くなった背筋を気のせいで片付けつつ、あまり深く考えないことに
しようと思いました。

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こちらデキ1形こと”電気機関車”の連結部から見えるのは、現役バリバリの7500系。
流石に車体の年季に違いはあれど、どちらも多くのお客さんの姿で賑わっている。
こうしてひとつの役目を終えてなお役に立ってくれているんだから、いつまでも
大切にしてあげたいものです。

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そんなこんなで保存車両と戯れること二時間弱、ついにお待ちかねのSLが来たー!

人生初の生走行を前にして、いい感じに温まった電車熱が急発進!何なら、
このまま線路に乗って何処までも走り出して行けそうです(うまいこと言ったつもり)。

同じような方が多いのか、あちこちから汽笛に負けない感嘆も聞こえるなかで、もちろん見慣れた
撮り鉄さん達の姿もちらほら。このパレオエクスプレスは埼玉県唯一のSL、その楽しみ方は
人それぞれです。

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前述の通りにSL走行は一日一回、従ってシャッター・チャンスも一回のみ。

しかし、意外にも停車時間に余裕があったので、別の角度からも撮ってみました。
いろんな場所を行き来しながらカメラを構えていたところ、
「あの前灯が光っているのが運行中の合図なんですよ」と同じく撮影をしに
来ていた方にお教え頂いた。

それから色々と電車について伺ううちに弾む会話、あふれる知識。
姉さん、これで僕も立派な鉄道マニアに一駅近付けたようです。

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それをさらに極めるべく、こうなったら運転席にも乗せてもらって来ちゃいました☆

……と言うのは冗談で、再び舞い戻った車両公園内のワフ51形の車窓から。
しかし、何も言わなければそれと分からないのが、いつでも静止画である写真のいいところ。
この写真を眺めながら先程のSLに思い馳せつつ、ここへ来たのと同じ5000系にて片道二時間
超の道のりを失礼します。

なお公園横には駐車場も備えてある模様。この秋、新たなファミリー・スポットとして
電車を観に行くために車でのお出掛けをしてみるのはいかがだろうか。

【今回取材させて頂いた秩父鉄道車両公園】

(年中無休{営業時間9:00 – 16:00})

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