誰が言ったか知らないが、訪ねてみれば確かに感じる魅力のご当地をさすらう「埼玉ブルース」。
【前回までのあらすじ】
さて、前回その名前の面妖さからようばけを訪ねて絶景に圧倒されたものの、周辺で和気藹々と楽しむご家族連れや青春を謳歌する
若者達を尻目にふと一抹の寂しさを感じた筆者。
悲しみに暮れつつ来た道をたどって行くと、その傷心の瞳に飛び込んで来たのは、ようばけ以上の面妖さを放つ
なんとも不思議な生き物であった。
恐る恐る近寄って見るも、このふしぎないきものが何者なのかはまったく分からない。
こうやって見るとかばに似てる気もするが、まったく同じではない気もする。
今のところ一番近いのは、自ら森の妖精と言って憚らない某ムーミンだろうか。ってことは、これも森の妖精なのか?
その謎を解明するため、このかばもとい某森の妖精似のふしぎないきものを有するおがの化石館さんへ。
「化石館」の名前に相応しく、館内は化石の展示でいっぱいです。
それらの展示群のなかでも最も目を引くのが、こちらの骨格模型。ありがたいことに館長さんからお話を伺うと、
なんとこれこそがふしぎないきものの実物大だと言う。
ええっ、デカッ!っていうか、この骨格とかメルヘンチックな外見に似合わず完全に恐竜のそれに見えるんですが。。。
この骨格標本、ここまで完全体で発見されたものは世界的に見ても大変稀なのだそうな。と言っても、
先程の展示はあくまで模型であって、実際のものはこうしてほぼ発見時の形状のままで丁重に安置されています。
こちらは、1981年当時に秩父セメント株式会社(現太平洋セメント)の現場にて作業員さんによって見付けられたと……
この方がしっかりした方でよかったですよね。もし今流行りのドジっ子だったら、なんて想像するだけで軽くこの時期名物の
怪談です。
「この骨格を踏まえて考えられた想像上の外見がこちらなんだよ」と館長さん。実際には当たり前ですが森の妖精の成分は薄く、
やはりかばよりの見た目です。しかし、色々と謎が多く、これ以外には分かっていないことだらけなのだとか。
「もしこの謎の生き物が鳴くとしたら、どういう鳴き声だと思います?」
「そうだねえ、実際はかばよりもジュゴンに近い生態だったなんて話もあるから、それに似てるんじゃないかねえ。ジュゴンの鳴き声って知ってる?」
「えっ、ジュゴンって鳴くんですか!? それって、どんな鳴き声ですか?」
「うん、実は私も知らないんだけどね」
「………………」
「………………」
館長さんと筆者の間に気まずい沈黙が流れた。
気を取り直して、このふしぎないきものを実物大にしてさらにリアルにしたものがちょうど近所にあると聞き、
もう一度バスに乗り込む。しかし、何度体験しても秩父の坂道はスゴイ。平坦な道ばかりでないこんなところにも
盆地特有の土地柄を感じます。
これをしばらく上がって行くと、
!?
一体なんと言ったらいいのか……!
とりあえず、あまりのインパクトを前に絶句してしまう圧巻のリアル・スケールっぷりであることは疑いようもありません。
平日ということで周辺にはひとつの人影もなく、小高い丘の上ということもあって大変静かで、今にも動き出しそうな
ふしぎなせいぶつと二人っきり(正確には一人と三匹っきり)、危うく泣き出すのを堪えます。
このふしぎないきもの、名前をパレオパラドキシアと言うのだそう。その名のパレオとは「太古の」、パラドキシアは「矛盾」の意ですが、現在の哺乳類には見られない珍しい臼歯を持っていることなど生態に不明な部分が多いためこの名が付いたとは、先程の館長さん談。
うーん、この後ろ姿とか完全にかばなのにな……なんて思いはしたが、よくよく考えてみたら、
一度もかばの背中なんて見たことなかったんでした☆
周辺には、かつてここが海であった名残りを伝えるこんなお魚の展示も。
これは、どうやらチチブサワラというらしく、この地名を冠付けるだけのことはある美しさです。……
でも、おいしそう。あれ、おかしいな。お腹は空いていないはずなのに(ry
よく水族館に行って泳いでいる魚を見ながら「おいしそう」などとのたまう輩が居ますが、
言わずもがな筆者もそちら側の人間です。
ひと通りよだれを垂らし切ったところで、改めて不思議な生き物ことパレオパラドキシアの大集合を撮ってみる。
毎回この記事を書いていて申し訳なく思うのが実物の迫力が写真では伝わらないという点ですが、
今回に関してはその心配はいらないような気がするので、それだけでも大変よかったです!
「こいつの背中に乗れたら、お花畑駅までひとっ飛びなんだけどな……」なんて淡い幻想を捨てて、
三度バスに乗り込み、晴れて仲見世通りまで戻って来ると、すっかり夜の帳は下りていました。
ここでは夏の季節だけビア・ガーデンが開催されているということもあって、大変な賑わいを見せています。
日が暮れても相変わらずの暑さですが、これなら熱気も大歓迎!
それにしても秩父の夏には、なんて夜が似合うんだ……。
この人込みに昼間同様加わりたいと願いつつ、これまた一人で飲んだら泣いちゃいそうなので
今回は失礼しておきました。
秩父市民の皆さん、次回はよろしくお願いします。
【今回取材させて頂いたおがの化石館様】
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