埼玉第九合唱団の精鋭たち【埼玉ブルース第11回】

埼玉ブルース

誰が言ったか知らないが、訪ねてみれば確かに感じる魅力のご当地をさすらう「埼玉ブルース」。

夏は部活の天王山とは言われますが、何もアツいのは学生さんばかりではありません。この猛暑を一意入魂の美声で迎え撃つ集団が居ると聞き、埼玉切っての精鋭ことグリーナインスさんを訪ねて来ました。

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グリーナインスさんは、その名の通り合唱を愛好するご機嫌な方々の集まり。
大まかに分けて合唱には混声/男声/女声とありますが、なかでも人気の根強い男声合唱に対して(力)強く、楽しく、美しいハーモニーを標榜していらっしゃいます。早速練習中のところを伺うと、その場は物凄い熱気!もう夜も更けようと言うのに、皆さんやる気が違います。

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その重厚な音色に、筆者も思わずシャッターを切る手が止まります。

しかし、大抵の素人が想像する男声合唱と言えば、白ジャケット・蝶ネクタイ・妙にアーティスティックな装丁の楽譜が三大要素のはず。今は練習中につき正装されていないのはともかく、最後の部分は一体どこに?

「あのう……失礼ですけど、今は楽譜とかってお持ちじゃないんですか?」

「もちろん持ってますよ。でも、それは歌う時には見ないんです」

うん? 持ってるけど、見ない?? それはまた一体どうしてなんでしょうか。。。

「最高のハーモニーを目指すためには、まず練習で教えられたことを頭で理解するんですよ。

そうしたら今度は何度も何度もそれを繰り返して、自然と体に覚えさせなければ駄目なんです」

そう言われて拝見した楽譜には、余すところのないほど書き込みがビッシリ!

その余白の少なさに、この曲を制する意気込みを感じます。

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真剣な皆さんに対し、指揮者の先生の指導にも自ずと熱が入ります。

それもそのはず、グリーナインスの皆さん、これから開催される関東おとうさんコーラス大会に参加されるとのこと!

この真摯な練習風景を見てしまったら、是非ともその晴れ舞台が見たくなって……

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そんな想いを募らせた甲斐あってやって来ました、山梨県。

「埼玉のサイトの片隅で山梨県ってふざけてんのか!」と何処かからツッコミが飛んで来そうですが、実はこの催しは埼玉県と深い所縁があるのです。

当日は、皆さんの日頃の行いを祝したような青空が広がるなんとも爽やかな快晴。お蔭様で綺麗な富士山を写真に収めることが出来て、これは早くも幸先がいいじゃありませんか!

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そんな絶景に見守られ、歓び勇んで入った会場では、既に出演者の方々によるリハーサルがはじまっていました。巷ではこの周辺がパワースポットと呼ばれるせいか、歌好きな皆さんの執念か。はたまたその両方なのか?まだ早朝にも関わらず、あちこちから発せられた凄まじい覇気に満ち満ちている。。。

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いよいよグリーナインスの皆さんも会場入りされ、これからの本番に控えます。その演奏を前に、観客含めた会場全体でご当地ソングの「ふじの山」を歌うことに。

今日の青空を映したようなあの一角が我らが埼玉の星☆グリーナインスさん。あれ、今お召しのそれってもしかして……?

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「あの、皆さん同じものを身に付けておいでのようですけど……」

「ええ、ユニフォームですからね。今回は夏の大会ということで、このTシャツで揃えることになったんですよ!」

ということは、つまり三大要素の残りふたつだった白ジャケと蝶タイも眉唾だったのか。

なんだか合唱ってもっとおカタい感じで、絶対に正装しなくちゃだめなのかと思ってました。

よく見せて頂けば、そのTシャツにはベートーベンの肖像画が描かれている。

実は、このグリーナインスさんの母体は、県内最大規模を誇る埼玉第九合唱団。

今から41年前に埼玉県内ではじめて第九を歌おうと結成されたこの由緒正しき歌好きのなかでも、特に男声だけを集めたのがこのグリーナインスさんです。

その名の通りに、毎年必ず第九を歌い継いでいる皆さん。現在ではその原流を離れて次々と新しい楽曲に挑戦していらっしゃいますが、その初心を忘れないために第九の作者をプリントしているのだそう。埼玉県を愛する者の贔屓目を差し引いても、一番凝っててカッコいいです!

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とは言え、そこは男声ばかりのおとうさんコーラス大会。その会場内は、夏の風物詩とも言うべき甲子園に勝るとも劣らぬ男性率で大変なことになっていましたが……そんななか素晴らしい目の保養にお集まり頂きました。

同じく第九合唱団からはるばる駆けつけて来られたマドンナさん達。

今日は自慢の喉を封印して、皆さん応援に徹していらっしゃいます(しかし、その掛け声はやはり鈴振るような素敵ボイス!)。

およそ180人の団員を有する埼玉第九合唱団のなかで、どのように応援メンバーが決まったのか伺ってみたところ、即座に「早い者勝ちの挙手制よ!」とのこと。あの荘厳なハレルヤ・コーラスを歌い上げる皆さんの気力は、流石に半端じゃありません。

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そうしている間にも次々に演奏は進んで、あれよあれよと言う間に、ついにグリーナインスさんの出番に。実はこのホール、ほかの会場とは一風変わった吹き抜けのコンクリート張り。「こんな感じでちゃんと響くのだろうか?」と素人のくせに心配していましたが、それを杞憂に変えるたくましくも鮮麗なハーモニーが木魂します。

このうたごえに、なぞのかんどう!

これを読んで下さっている方とこの感動を分かち合えないのが大変残念でなりません。

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曲目は男声合唱では定番中の定番とも言える『月光とピエロ』より「秋のピエロ」と、こちらもその道の真髄を捉まえた「とじた眼に」。どちらも埼玉県隣県出身の文豪による大変な名詩です。

実は、今回で25回を数える関東おとうさんコーラスの発祥は、なんと我らが埼玉県。もともと隆盛を極めていたおかあさんコーラスに呼応するかたちで、サッポロビール川口工場を貸し切って合唱を愛する有志達ではじめられたのがその由来と言われています。埼玉からはじまったおとうさんコーラスが関東圏内各地をめぐって、今年は富士山の麓で開催されるなんて、なんだか感慨深いですよね。

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そして、晴れて本番を終えた皆さんと一緒に乾杯!

このおとうさんコーラス大会の特徴は、何と言ってもこの二次会。

お偉い方の音頭で鏡開きの後は、めいめい配られたオードブルとお酒で会場内でのプチ打ち上げがはじまります。

そんな宴席には、もちろんのこと余興が付き物。しかし、そこは根っから陽気で歌好きの皆さんのこと。

ここで飲むのも見るのも自分達なら、あそこで披露するのも自分達というまさかの驚くべき自給自足を遣って退けてしまいます。

どうでもいいですが、この出し物、余興と言う名の割にかなり凝っています。

もしかしたら本番よりも気合が入っていたりしま、せんよねそうですよね!

折角なので、ご無理を申し上げて本番を終えて緊張のほぐれた皆さんをパシャリ☆

突然のお写真の依頼にも関わらずに、何の衒いもなく笑顔で応じてくださったおとうさん達に、今回は本当にお世話になりました。

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最後は記念写真を撮影させて頂いて、グリーナインスさんとはお別れ。

皆さん、本当にお疲れ様でした!

もう夏休みに入ったお子さんや普段働きづめの夫の休みを心待ちにする主婦からの理解を得難いかと思われたおとうさんコーラス。しかし、こんなに輝いているお父さんを見てしまったら、いつも以上にもっと惚れ直さないではいられない。かも知れないと思った、今回の取材でした。

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