誰が言ったか知らないが、訪ねてみれば確かに感じる魅力のご当地をさすらう「埼玉ブルース」
我らが埼玉県の名物といえば、グルメに芸術にスポーツと、その候補は数知れず。なかでも、今なお全国的に知名度を集める伝統文化があると聞き、今回は「○○○○と花のまち」こと鴻巣市にお邪魔して来ました!
都心や県央からは、お車なら国道17号線ほか関越自動車道や圏央道など抜群のアクセスを誇る鴻巣市。
公共交通機関なら”北の玄関口”ともいうべき上野駅からJR高崎線で一本で行けるという行楽地としては申し分のない、まさに好立地。
一時間に4~6本ほどある電車から降り立った駅構内には……まさかのおひなさま!?
そう!
ここ鴻巣市はひな人形の製作が大変盛んなことで知られる「ひな人形と花のまち」。
その歴史は、約380年前の江戸時代にまで遡ることができ、今でも市内の各地には人形店が多く見られます。
特に、この女の子の節句に合わせて開催される「鴻巣びっくりひな祭り」は、まさに街を挙げての一大イベント。
期間中は個人の商店や金融機関をはじめとするいたる場所に人形が飾られ、まさに街はひな祭り一色。最近では、テレビや雑誌などで取り上げられる機会も増えていて、来訪者数は右肩上がりなんだとか。
こちらは鴻巣駅東口から直結のショッピングモール「エルミこうのす」に飾られているひな人形。
5角すい型という珍しいひな壇の形状もさることながら、イベント・スペース内にところ狭しと並べられた人形は「圧巻」の一言。
「それにしても、ショッピング・モールにひな人形ってシュールだなあ……」と思いきや、そこはれっきとした商業施設。周辺に置かれたひな人形にはそれぞれ値段がつけられ、その場で購入できるものもあるとのこと。
数ある人形たちに目を奪われてしまったものの、実は市内にはもっと迫力ある見どころがあると伺って、
さらに足を伸ばして駅から歩くこと約15分、訪ねたのは鴻巣市役所。
しかし、市役所といえば、普段あまり縁のない若干おカタイイメージのある場所。
そんなところで、本当にきらびやかなひな人形を拝むことなんて出来るのだろうか?
ちょっと訝りながら足を踏み入れてみたところ……
そこには腰を抜かすくらいに大量のひな人形が一堂にお目見え!
“若干おカタイ”どころか、平日にもかかわらず大勢の観光客でにぎわう会場内の熱気はただただ「スゴイ」。何がスゴイって、こんなにたくさんの集客がありながら、それでもここに並べられた人形の数には到底及びそうにないってところがもうスゴイ!
ここに並べられた人形たちには、それぞれに個性や持ち味があるというからビックリ。
これは「びっくりひな祭り」の看板に偽りありません。
市庁舎中央を陣取るピラミッドひな壇をはじめ、階段を埋めるように敷き詰められた階段びななど、この会場内にあるだけでもその数は、なんと4500体超!
それぞれ個性があるにしても、そのひとつひとつを見比べるのには大変骨が折れそうです。
カメラ機能の手を変え品を変え、あらゆる角度から全景を捉えるべく、しばらくカメラ越しにおひなさまと格闘してみましたが……どうやらこれが限界の模様。
しかし、どれも同じように見える人形も、こうして目を凝らしてみると、その表情や装飾にもかなりの違いがあるものなんですね~!
平日・土日を問わず、期間中はボランティアの方が常駐して、この「びっくりひな祭り」のこと
やひな人形に関する知識など、さまざまなお話を伺うことができます。
「ちなみに、これって何段くらいあるんですかね?」の問いに対しても、「私の三段腹も真っ青の31段です」とのなんとも粋なご返答。
今年で第11回目を数えるこのお祭りとあって、参加しているボランティアさんも最古参の方では、なんと11年のキャリア。こんな風にさらりと口にする軽妙なユーモアも、さすがに堂に入っています。
とはいえ、この取材を敢行したのは、まだ女の子の節句前。「びっくりひな祭り」のメイン会場であるこの市役所をはじめ、先ほどののエルミこうのすなどで展示は、まさかの3月7日まで。
「この記事が掲載になる頃には、既にすべて終わってしまった後じゃないか!」と肝を冷やして
いたところ、どうやら今からでもまだ間に合う懐が広いにもほどがある会場があるとのこと。
そこへ向かう道すがらにも、実は隠れた注目ポイントはたくさん。行く先々の店頭に花を添える町内びなを見るにつけ、改めてここ鴻巣がひな人形のまちと謳われる由縁を感じます。
そうして、旧中山道沿いに歩いた目の前に現れたのは鴻巣市産業観光館「ひなの里」。
鴻巣市の観光情報発信拠点として、さまざまなイベントの企画や運営を担うナウなヤングのみならず市民にとっての強い味方です。
年間を通して企画展や特産品の販売が行われているとあって、常に人気の耐えない同施設も、この季節には格別なにぎわいを見せているということで、
早速お伺いした館内には、その名のとおりにひな人形がずらり!
数ある展示の中には、全体を赤く塗り重ねることで魔除け品として用いられてきた国指定重要無形民俗文化財の「赤物」など、ここにも鴻巣市の伝統文化が。
それにしても、こんなに多くのひな人形を一度に拝む機会があろうとは……
この館内には約1500体のひな人形があるそう。「享保びな」や「古今びな」など年代を感じさせる珍しいひな人形のほかに、こうした家庭用のものも。
ちなみに、この「びっくりひな祭り」で展示されるひな人形は、その年ごとに全国から寄付で
募っているそう。
毎年一月頃から受付を開始して、およそ300件ほど寄せられるひな人形には、そのひとつひとつにさまざまな物語が秘められているよう。
それぞれが持つ歴史に思いを馳せながら眺めることができるのは、この「びっくりひな祭り」ならではの楽しみ方かも。
館内を出ると、まず目につくのは、何と言ってもこの昔ながらの蔵造り。
こちらは明治期に建てられたもので、きちんと清潔感を漂わせつつも、どこか当時の面影を偲ばせます。
先述の市のスローガンでも謳われているように、鴻巣市は「ひな人形と花のまち」。
これからの暖かい季節には、お庭できれいなお花を眺めながらのんびりとくつろぐのも”オツ”な楽しみ方と言えそう。
ここ「ひなの里」きっての見どころといえば、館内のみならず蔵前にもあますところなく飾られている「川幅飾り」。実は、数多くの「日本一」を誇る鴻巣市。吉見町との間をまたがる荒川の川幅は2,537mもあり、こちらも日本一に認定されているのだとか。
その規模にあやかった川幅飾りは、通常のひな壇ではなく荒川の流れのように裾を広げて飾られて
いるということで、五角すい型やピラミッド型に劣らず、こちらも大変特徴的。
この中庭に飾られたひな人形をすべてつなげると、「川幅日本一」の100分の1の長さ25.37mになるということで、その広大さが窺えます。
おまけ;ご無理を申し上げて、お雛様を閉じた状態の蔵前も撮らせて頂いちゃいました☆
歴史のある建物ということで、質実さを称えていて、これもなかなかに魅力的。
【今回取材させて頂いたひなの里】
048-540-3333
9時~17時開館
水曜日(国民の祝日にあたる場合は翌日)、年末年始休館
[お詫びと訂正]
2015年3月6日に掲載致しました「埼玉ブルース第37回」の記事におきまして、記述に誤りがありましたので訂正させて頂きました。三笠屋さんの看板お母さんについて、「三代目」との表記がありましたが、正しくは「二代目」となります。ご迷惑をおかけした読者の皆様ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。
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