誰が言ったか知らないが、訪ねてみれば確かに感じる魅力のご当地をさすらう「埼玉ブルース」。
梅雨前線真っ只中の湿っぽさを蹴散らして、今週もはじまりはじまりー!
巷では大雨が予想され、各地で的中を遂げるある日。
「ここでしか食べられない自販機グルメ」の存在を聞き付けてお邪魔したのは、行田市の鉄剣タローさん。
生憎の天候も影響してか泊められている車は一台のみ。これは絶好のブルース日和。
なぜか”さん”を付けたくなるその奥ゆかしい名前につられて、恐る恐る店内に足を踏み入れてみると……
まだ日中にも関わらず、そこには何処か昭和らしいアンニュイに支配された独特の雰囲気が広がっている。
それに逆らいつつ進んだ先には……ありました、ありました。
前世紀までは、確かによく見掛けたはずのハンバーガーの自販機を発見!
かつては全国各地でよく見掛けられたらしいこの自販機、今では埼玉県内を数えても、この一機だけなんだとか。
生憎とお取り扱いは、チーズ・バーガー一種とやや玄人使用であるものの、”今も稼動してくれている”と言うただそれだけで愛おしい。
やっと邂逅を果たせた感動を噛み締めて、コインを数枚投入したら、
をををををー!?
加熱中の文字の点滅とともに、そこはかとなくいい匂いが漂い始めているじゃありませんか!
これはなんだか期待出来そう。
ハンバーガーを待っている間、腹ごなしも兼ねて辺りを見渡してみると、
これも今やここにしかない大変なレア物らしいロッテのアイス自販機も発見。颯爽と購入を試みたものの、上記の理由で、現在はもう販売していないそう。
折角なので、ハンバーガー自販機のお隣にあった見覚えのある”うどん/そば”の自販機で、以前と同じうどんを買って、いざ実食☆
そのお味はと言うと……
あれ? 今までに食べたのとは、一味違う???
それぞれの販売機自体は同じ、汁一滴もとりこぼさぬ安心設計でうっかりハプニングを許さないのも同じ。
どうやらそこに商品を納入されている業者が異なるようで、前回食べたものとは、まるでテイストが違います。
具体的には、なるとやわかめなど具沢山だった前者に比べて、こちらは掻き揚げが乗っているのみ。
とは言え、そこには数え切れないくらいにふんだんの野菜が入れられているほか、ちゃんといかの歯応えもあったりする。
おまけに、麺自体のコシもあったりして……うん、これはうっかり有名店にすら負けないクオリティかも。
そして、お待ちかねのチーズ・バーガーは、こんな箱に覆われて、コイン投入後から数十秒後に温まって出て来ます。
既に辺りに漂い始めているファストフード特有の蠱惑臭に抗い切れずに、早速食べてみる。
もちろん箱ごと温めてくれるだけなので、案の定パンはふにゃふにゃ。
でも、そこに挟まったパテが意外にしっかり肉々しくて、ちょっとビックリ。
それも厚さの割にはしっかり柔らかく、やっぱり昭和を懐かしむ客層の歯への負担を案じてくれているのだろうか。
ちなみに、お味自体は見た目の印象より優しく、平成生まれのお子様にも受けのいいこと請け合い。これなら、チーズが苦手な人でも行けるかな?
ここをお訪ねになる際は、熊谷バイパス沿いの立地を考慮するに、もちろん車がお勧め。
どっこい免許すら持っていない筆者は徒歩で伺ったのだが、あいにくの大雨(と道中のぬかるみ)を心配したご店主がこんなものを下さった。
「お店を閉めようと思ったこともあったけれど……お客様に喜んで頂けるなら、と消費税増税後も値上げはしていない」とおっしゃるその温かな心意気で、これからも埼玉県内唯一のハンバーガー自販機を守って行って頂きたい。
【今回取材させて頂いた行田市の鉄剣タロー様】